来年に向けて厚生労働省は「賃金引き上げ」を推進するための助成金制度に関わる予算を大幅に確保する方針を打ち出しました。
この助成金制度は、最低賃金の引上げや、労働環境の改善により、企業の生産性向上や正規・非正規の格差縮小、人材の定着を目的としています。
賃金の改善は、従業員の生活の安定だけでなく、企業の生産性向上にもつながります。
本記事では、企業の支援を通じて、従業員の持続的な成長を目指す取り組みについて、主要な助成制度の概要とその活用方法を詳しく解説します。
最低賃金制度とは?
最低賃金制度は、すべての労働者に対し、雇用形態や年齢に関係なく一定の最低額以上の賃金が支払われることを保証する制度です。
これは労働者の生活を支えるための重要な仕組みであり、企業側は最低賃金を遵守する義務を負います。
日本の最低賃金制度には、以下の2種類があります。
- 地域別最低賃金
都道府県ごとに異なる最低賃金額が設定され、すべての労働者に適用されます。地域の物価や賃金水準を考慮し、毎年見直されます。 - 特定最低賃金
特定の産業について、地域別最低賃金よりも高い賃金水準を必要とする場合に設定される最低賃金です。
製造業や医療・福祉業など特定の産業の基幹的労働者に対して適用されます。
最低賃金を引き上げる企業に対し、支援を行うのが業務改善助成金です。
業務改善助成金
生産性向上を目的とした設備投資などを行い、業務改善を進めるとともに、
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げる中小企業・小規模事業者に対して、その業務改善に要した経費の一部を助成します。
事業場内最低賃金の引上げに加えて、生産性向上に向けた設備等の導入を行うことで、最大600万円の支援を受けることができます。
賃金引上げは30円~で、引上げる金額や、労働者数により助成上限額は異なります。
1人あたり30円の引き上げには最大30万円、90円の引き上げには最大600万円の助成が受けられます。
詳しい助成率やコースについては厚生労働省のホームページをご確認ください。
働き方改革推進支援助成金
労働時間削減や年次有給休暇の取得促進などの環境整備を進めるため、
専門家のコンサルティングや生産性向上に役立つ設備・機器の導入を支援します。成果が上がった場合に助成金が支給されます。
取り組みの実施に要した経費の一部が助成され、成果目標の達成状況に応じて補助上限が100~250万と変動します。
同時に賃金引上げを行う場合、補助率がアップします。
詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
人材開発支援助成金
職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を実施した場合等に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
人材開発助成金には以下のコースがあります。
①人材育成支援コース
職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金を一部助成するコース。
②教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練等制度を導入し、労働者が休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成を受けられるコース。
③人への投資促進コース
デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、
定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されるコース。
④事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、
訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコース
⑤建設労働者認定訓練コース
認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、
建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成するコース
⑥建設労働者技能実習コース
雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するコース
⑦障害者職業能力開発コース
障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるため、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に、その費用を一部助成するコース
詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
キャリアアップ助成金
企業内での非正規雇用労働者のキャリアアップを支援する助成金制度です。
賃金規定の改定をしながら、労働者の長時間労働の改善と、安定したキャリア形成を促進し、企業の生産性向上にもつながることが期待されています。
・正社員化コース
非正規労働者を正規に移行した場合に適用されます。短時間からの移行も対象内です。
・賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用した企業に支給されます。
・賞与、退職金制度導入コース
従業員の長期雇用を促進するため、新たに賞与や退職金制度を導入した企業に支給されます。
他にも障がい者正社員化コースなど様々なコースが設けられています。
詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
最後に
今回は厚生労働省が行っている賃金改定や労働環境の見直しに関わる助成金についてご紹介しました。
ご紹介した助成金以外にも、現在公募受付中の補助金や助成金も多くあります。
申請をご検討中の企業のみなさま、ぜひ一度サポート行政書士法人へご相談ください!
※この記事は2024年11月時点での情報を基にしています。申請時期や補助内容に変更がある場合がありますので、ご注意ください。
補助金内容によっては弊社で対応できない場合もあるのであらかじめご了承ください。